大学生チッポラの小説

国立理系大学生。実話とフィクションを織り交ぜた小説を書いています。気ままに更新。

小説【夢日記】 渇望

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渇望

2021年1月3日

夢を見た。
また、白い髭のおじいさんがいる。
少し遠くにいるような感じがして、僕は近づくように歩を進めた。
ドスっドスっという音が響く。僕の足音だ。
あぁ、何か憤っているみたいだ。
歩くごとに、抱いている不満がくっきりと輪郭を見せる。

僕は、飢えているのだ。
ひどくつまらない。

白髭のおじいさんの元へ辿り着いた。
同じように厳格な顔つきでこちらを見ている。
そして僕に言った。

「君は今、枯れ果てている。そして渇望しているのだよ。」

僕は聞いた。
僕は一体何を渇望しているのかと。

「君は、”共感したい”という渇望を抱いている。君は、人との関わりが絶えたことで、共感できる相手を失い、その心が少しずつ飢えてきたのだ。
この未曾有の日常の中で、今まで関わっていた人にも、違いが浮き彫りになってしまって多少存在した共感ができる重なり合った部分が消えてしまった。そして、飢えはより強くなってしまって、君の不足感は増した。
君と世界観の似ている、一緒にいて心地の良い人を見つけなさい。
あるいは、小説や自伝物の本を読みなさい。
貴方に合っているから。きっと楽になる。」

そう言って、姿を消した。
もう朝だ。
夢の内容は鮮明に覚えている。
怖い夢以外は大概忘れるものなのだけど。

不思議な言葉だ。
「共感したい...」
共感されたいという言葉はよく聞くけど、共感したいってあまり聞かなかった。
実際僕も、「共感されたいんだ!」って強く感じているものだと自己分析していた。
共感したい渇望なんてあるんだなぁ。
でも、考えてみたら納得がいく。

僕は、同い年ぐらいの子が何か必死に頑張っているような姿を見ると、
なぜか心地が良くなる癖がある。
いや、たまに嫉妬もするけれど。

なんというか...
僕ぐらいの若齢の間では、要領よく遊んだ奴が賢い生き方みたいな流れがある。
その中で浮世離れして、好きなことに必死で、楽しそうな姿というのが、
僕の中の美学のようなものに、とても重なり合っているんだ。

小説なんかもそうだ。
感動だったり怒りだったりの感情移入ができる、
共感ができる小説って読んでいて楽しい。

そう考えると、”共感したい”欲求というのは案外身近な事かも。
今回、このフラストレーションをまた言語化してくれたお陰で、
またスッキリした心持ちになれた。
わからないモヤモヤほど、苛立つものはない。
そしてそれを和らげる術も知った。

周りと違う自分が出てきて息苦しい時は、共感できる場所を探そう。
本でも人でもなんでもいい。
そうすれば楽になれると知れたから。